■マコの傷跡■

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chapter 28



~ chapter 28 “迷い” ~




新しく、家の近所の会社に勤める事になった。
そしてその会社で知り合った人と付き合うことになった。
その人は会社でいつも笑っていて、社内で誰かがもめても
間に入ってピエロになり上手くその場を和らげる役割をしていた。
そんな彼を見て実は裏で結構無理してるんじゃないかなぁと思って惹かれた。
自分に似ているんじゃないかと思ったからかもしれない。
似ているのなら笑顔の影で泣いているはずだった。
もしもそうならば気持ちの支えになりたかった。

だけどその人は私に似てなんかいなかった。
私が思っていた無理してる人なんかじゃなく、そういう自分が好きなのだった。
ピエロを演じる事で疲れたりはしない。いや、そもそも演じているのではなかった。

付き合う事になったのなら真剣に向き合いたい。
そう思っているのに彼とはいつも上手く行かなかった。
私とその彼とは気持ちは向き合っているはずなのにいつも私が空回りしているようだった。
私は彼にもっと頼って欲しかったし甘えて欲しかった。
たまには我侭言って困らせるくらい私を欲してほしかった。
そうでないと私の居る意味がわからなかった。
その人は自分のペースを全く崩す事なく、会いたがるのはいつも私だった。
それが寂しかったし、私はどんどん自信を失って行った。
求められていないと私は全くダメだった。

前の彼とあまりにも違いすぎる。
「私はもっと何か出来る」と思った気持ちは瞬く間にしぼんだ。
前の彼が居た時は、彼が居たから、彼が必要としてくれたから自信を持てたんだ。
彼が私にそんな強い気持ちをくれていたんだ。
もっと成長してから彼に戻るなんて自惚れを持つほど、私は大事にされていたのだ。
彼から離れたら私はこんなにも情けない人になってしまう。
それには気付いたが今更、戻る訳には行かないと思った。
ある程度覚悟はしていたはずだ。だからこそ彼から離れたのだから。
でも、まさかここまで弱くなるとは・・・。

前の彼の所に今すぐ戻った方がいいかもしれない。
今ならきっとまだ間に合う。今ならまだ彼は受け入れてくれる。
でも、それじゃぁ何の為に別れたの?
今戻ったら何も変わらない。私はまだ、何も掴んでない・・・!!
どんどん自分が力を失っていくのに今の彼と付き合いながらどうする事も出来ずにいた。


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